クライミングの安全対策

じゃろう岩・バイタミンR 5.14c

フリークライミングは、山岳地帯をフィールドとするクライミングと比較して、安全なクライミングと紹介されていることが多いですが、それは山岳地帯でのクライミングと比較したときの話で、当然ながらフリークライミングにも危険は存在します。

ご承知のようにTCNetでは、高梁川流域のクライミングエリアにおいて、老築したプロテクションの再生活動を展開しています。再生が完了したエリアについては、プロテクションの安全性は向上したといえますが、現在までに再生が完了したエリア(ルート)は、流域の総エリア数から考えるとまだ一部となっています。
TCNetでは今後、残りのエリアの再生を進めていく予定ですが、事故が発生する原因のほとんどが人的ミスであることを考えた場合、再生はあくまで最低限の安全確保に過ぎず、再生されたからといってすべての危険が排除されるわけでは決してありません。

重大事故が発生した場合、エリアの禁止問題に発展しかねません。

事故を未然に防ぐには、一人一人のクライマーが安全に対する意識を常に持つことが重要です。
ではいったい、どんなことに気をつければ事故を未然に防げるのでしょうか。これまでにフリークライミングの現場で起きた事故の教訓から、事故が起きる原因とその対策を以下にまとめてみました。

★リードクライミングでの安全対策

  1. 登りだす前には、ロープが正しく結ばれているかチェックする習慣をつける。
  2. ビレイ器具とロープとの相性には気をつける。
  3. 「ここで落ちればどうなるのか」を常に意識してリードする。
  4. ルートの下部では、「ここで手繰り落ちすればどうなるのか」など、常にグランドフォールの可能性を意識する。
  5. 無理な体勢でクリップするのではなく、安全な体勢でフォールする。無理な体勢では絶対にヌンチャクを掴みにいかな い。
  6. グレードで登るルートを決めるのではなく、プロテクションの種類や間隔、岩の形状などを総合的に分析し、自分の力量を考えた上でルー トを選択する。
  7. ルートによっては「落ちれないセクション」が存在する。登る前にはルートの性質をよく確認す る。
  8. 登ることに一生懸命のあまり、ロープに足を入れたり、危険な体勢でクリップをしようするクライマーをよく見かけるが、自分をコント ロールできる余力を残して登るのが基本。
  9. 登攀中にロープやカラビナ、残置プロテクションをチェックする癖をつける。
  10. 特にトラバース時など、カラビナのゲートの向きには気をつける。
  11. とにかくロープをさばく癖をつける。登りに行くたびに脛の怪我が増えるクライマーは要注意。
  12. ルート以外の部分は登らない。
  13. ロープやハーネス、ヌンチャク等のギアを日頃から点検する。
  14. ビレイヤーは現場の状況に合わせたビレイを心がける。たとえば、壁への激突を防ごうとロープを流しすぎたことで、「墜落距離が長く なって岩の突起に激突」したのでは意味がない。
  15. ビレイ中の人に話しかけない。
  16. ビレイヤー以外の人はクライマーの下に入らない。
  17. 落石を落とさない。又、落石の危険のあるエリアではヘルメットを着用する。
  18. 落石が多いエリアに大勢のクライマーがいる場合、無理してそのエリアで登らない。
  19. アプローチに落石の危険がある場合、中途半端に離れて歩かない。
  20. 寝不足、過労など、集中を欠くようなときには登らない。

1~13はリード、14~16はビレイ、17~20は落石等に関しての安全対策です。⇒落石に注意しましょう
ここにあげた項目は、過去に起きた重大事故の教訓から、岩場でリードするクライマーには特に知っておいてほしいものを選びました。
当然、項目にあげていないものでも重大事故に直結するケースはありますし、人的ミス・プロテクションによる事故でなくとも、自然現象や動物に起因する事故もあるでしょう。また、重大事故でなく小さな事故や怪我は、予想だにしなかったことから起きるケースがあります。
生と死の分岐点」「JFA会報・安全BOOK」などに、過去のクライミングの事故についての詳細が紹介されています。ぜひともご覧ください。

どんなに注意していても、事故を起こしてしまうことはあります。もちろん、まったく事故を無くすことなど不可能でしょう。
しかし、登ることには常にリスクが伴うということを認識し、過去の教訓に学ぶことで、多くの事故は未然に防げるはずです。