男の花道 5.13c (備中・羽山渓)

今さらここで紹介するまでもなく、「男の花道」は備中を代表する素晴らしいラインである。

開拓者の森脇氏は、備中で数多くの『傑作』を拓いておられるが、その数々のルートの中でも、「男の花道」が氏の最高傑作の一本であることは間違いない。
当初ルート名に“男”はなく、「花道」であったことは感慨深いが、それにしても「男の花道」、なんと渋いルート名なんだろうか。

私が「男の花道」を完登したのは8年ほど前で、確かサイコネス(学力石)を完登した二週間後に完登した。パワーエンデュランスかつ、テクニカルな内容に苦労したが、5回目くらいでRPしたと記憶している。
この時の私は、怪我明けの絶好調期というか、次々に狙ったルートを落とせて調子に乗っていたが、憧れの「男の花道」を完登できたことは非常に嬉しかった。
RPしたあとも、持久力トレーニングとしてよく登ったが、いつも頭が真っ白になるくらいパンプして再登できる確率は低い。

「男の花道」は、右のハング帯に比べて傾斜はないが、休めないカチが連続するため非常にストレニである。「棲竜門」が全身パンプ系なら、「男の花道」は前腕死後硬直系かな(笑)。
ユージさんや松島君ですらオンサイトに失敗しているが、去年、岩場経験に乏しい安間くんがオンサイトしたとき、そのパフォーマンスに言葉もなかった。本当にビックリだったわけだけど、安間君がどこまで行くのか非常に楽しみである。

ご存じ羽山は三つ星ルートが並ぶ★だらけのエリアだが、「男の花道」には五つ星を与えたい。

(2007/10/15に公開)
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* エリアでの注意点・マナー


初夜の床上手 5.11d (帝釈峡・岩谷エリア)

「初夜の床上手」というルート名を、フリーファンに掲載された記事で初めて見たとき、広島の人は○がないな~と正直思った。
でも、テラスなんかがあるんやろな~と想像をふくらませ、すぐに登りに行ったように記憶する。(*^_^*)

岩谷に行くと、開拓者のY氏も来ておられ、帝釈峡のいろんな情報が聞けた。
「バージンロード」でアップをすませて、「初夜の床上手」をオンサイトトライする。今から10年前の当時、5.11台はコンスタントにオンサイトできていたので、それほど気合いも入れずに、上部にあるかもしれない”床”とはどんなかな?くらいの気持ちで取り付いた。

しかし、三倉で鍛えられたY氏のルートは、バランスクライミングの要素が強く、同じ石灰岩でも備中のルートとはまったく異質なものがあり、例えるなら関西の柏木をもっとやらしくしたような、はたまた南仏にあるクラシックなルートのような…。とにかく下部から大はまりしてしまい、Y氏を非常に喜ばせてしまった。

すべりそうなスタンスと、どこを持っていいのか分からないホールド。最上部の”床”にたどり着いたときは、ボロボロ状態に。しかもホールドを見落とし、床で何度もマントル、そして落ちまくった。
自信があったのに、「床上手」には当時のレベルではとてもなれなかった(笑い)!

といっても、その日は非常に暑く、コンディション的には決して良くなかったので、次に行ったときにはそこまで悪い印象はなくR.Pできた。
5.11dだが、岩場をあまり登っていない今時の人工壁クライマーには、ちと厳しいかも。しかし内容は非常に濃く、両隣の「初夜の床」、「デスペナルティー」とともに帝釈を代表する5.11ルートだと思う。

(2007/07/04に公開)
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* エリアでの注意点・マナー


センデロルミノソ 5.12c(備中・権現谷)

笹の茶美人に成功して、次は権現で何を登ろうかと迷っていたら、当時はまだ元気に?クライミングしていた四国のエビータさんに「センデロをやったらええ」と、いかにもハメてやろうみたいな感じでこのルートを薦められた。

エビータさんが言うには、中間部にボルダームーヴの核心があって、「わしにはでけんのや~」とのことだった。
なるほど、岩雪のトポにも「非常に厳しい核心である」とある。
そんな自分ができんもん人に薦めんなよーと思いながらも、グレード的には射程圏内だったのでとりあえず登ってみた。

核心のムーヴは今の感覚なら2級くらいなんだろうが、当時の私にはきびしく、さんざんハングドッグしてなんとかムーヴを解決した。
といってもムーヴができてしまえば、核心の手前で休めるので、すぐにR.Pできたように記憶している。

確かにワンポイトなルートかもしれないが、核心の前後もやさしいわけではなく、むしろ核心の後もストレニで、全体的に気が抜けないルートだと思う。
イメージ的には、隣の河原べいとを難しくして2級くらいの核心を加えた感じ。

最近は誰も登ってないようで、チョークが全然ついていないが、今のレベルではそこまで厳しいということはないので、もっと登られてもいいルートでしょう。

(2007/07/04に公開)
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* エリアでの注意点・マナー


笹の茶美人 5.12d(備中・権現谷)

権現谷には、スケールのあるストレニュアスな好ルートが並んでいる。
その中でも「笹の茶美人」は、「もも(5.12a)」や「下には下がおる(511d)」とともに、権現だけでなく備中を代表する質の高い人気ルートだ。

私が始めてこのルートを登ったのは、今から10年前。5、6回目でR.Pした記憶があるが、自身初めての5.12+の完登だった。
取り付きがルーフになっていて、2~3級くらいのボルダームーヴでスタート。
初めはその部分をとばして、上部のルート部分(今は”さの茶”と呼ばれている)だけを登り、その後下からつなげて完登した。
今では、ボルダーからスタートしても、上だけ登っても「変わらない」などと言っているけど、当時のレベルではいっぱいいっぱいだったのだろう。

上部は、美しい前傾壁に散らばるカチが核心終了まで続き、その一手一手にムーヴがあるので面白い。ホールドはどれもよくかかり、そこまで悪いという感じではないが、最後までレストができないので、パワーエンデュランスな内容となっている。

昔のトポに「エキスパート向けの好ルート」と紹介されているが、今のレベルではエキスパート向きはともかく、好ルートであるのは間違いない。
権現には今でもよく行くが、このルートは行けば必ず1回は登る、何回登っても楽しいルートだ。

(2007/07/04に公開)
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* エリアでの注意点・マナー


ランコロ 5.12b(備中・ニューエリア)

ランコロは、私にとっての初 5.12b(細かい!)。
そのときすでに、「美しくカンテ」や「けもの道」は登っていたが、両ルートともその当時は5.12a だったのでランコロが登れたときは嬉しかった。
グレード更新がかかり、早く登りたくて、RPした日は仕事を休んで登りにいった。
といっても4、5回目で落とせたので、なんでこのルートが美しくカンテよりグレードが上なのか?と不思議に思ったりもした。

カンテや水の泡などの人気ルートに比べて少し地味な感はあるが、ムーブが多彩で、ステミングやレイバックなんかが出てきておもしろく、ストレニ系のいいルートだと思う。
みんなは終了点のクリップが核心と言うが、私は体型がマッチするのか、そこまで悪いと思わない。実際、京都物集女街道(ランコロのロングバージョン5.13d)を登ったときは、終了点のホールドでけっこうレストできた。

このルートは、初登されるまでは設定者が四国の人ということもあって「四国第一国道」の仮称があった。
しかし物集女のセクションがつながらず、登れるところまでの場所に終了点を設置、そして初登された。それで終了点の位置が悪い。
ルート名の由来は、初登者のランクルが事故してこけたかららしい。

その後、上部までのラインが京都のK住君によって登られ、ランコロの終了点を撤去するかしないかが話題になったりもした。
私個人の意見として、物集女街道を登るとランコロの終了点がけっこう邪魔になる。そこでランコロの終了点をカラビナのみ(もちろん2枚)にしたらどうだろうか?そうすればかなりすっきりすると思うのだが。

(2007/07/04に公開)
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* 羽山・ルールと注意点


もう秋た 512c (備中・羽山渓)

初めてこのルートを登ったのは今から10年くらい前かな。
羽山右壁の最弱点をついた見事なライン取りと、ムーブの多彩さ、それにルートの美しさはすばらしいの一言であり、備中屈指の好ルートだと思う。

初登者は当初、最上部を直上しようと打ち込んだが、どうしても繋げて登ることができず、結局、直上を諦めて「直上はもう飽きた」と、右にラインを取り初登したのがルート名の由来。
しかし、どう考えても右が弱点だったので、そのとき直上では登れなかったが、弱点をついた大人気ルートの誕生となったので、結果オーライ、それはそれでよかったのだろう。もしこのとき、初登者が直上に成功していたら、もう秋たというルートは存在しなかったかもしれないのだから。
直上の方は長い間プロジェクトだったが、ご存じのように平山ユージ氏により初登され、今では羽山の5.13ルートの登竜門的存在となっている。

少し前だが、「そのまま過ぎた」が登攀禁止なら、同様にこのルートも登攀禁止にするべき、という意見があった。
「そのまま過ぎた」は、取り付きこそ左の「半日仕事」と同じだが、途中から大きく右にトラバースし、最後はルートが道路の上にくる。
今までクライマーと車との間にトラブルなどは起こっていないと思われるが、これから先も、接触事故などトラブルが起こらないという保障は誰にもできないわけで、もしこの先、「そのまま過ぎた」が原因でトラブルが起きてしまい、エリア自体が禁止にでもなれば取り返しのつかない事態になるため、問題が起きる前に手を打とうと、クライマー間で話し合いが行なわれ、登攀禁止を取り決めた。
「そのまま過ぎた」はムーブが面白い好ルートで、登攀禁止はとても寂しいが、この取り決めは客観的に考えた場合、最良の措置だったのではないかと考えている。

さて、もう秋たで問題とされるべき点は、ロワーダウン時に屋根の上に降りてしまうこと、1ピン目までがアブミによるA1のため多くのクライマーが1日中アブミを掛けっぱなしにしている点、それと、トンネルから出てきた車からビレイヤーが目立ってしまう点、などである。
したがって、「そのまま過ぎた」とは明らかに問題点が違うといえる。

TCNetでは一昨年、もう秋たの取り付きを右の「見苦しくカンテ」と同じにすることでそれらの問題点を回避することができると考え、もう秋たの取り付きを変更した。

(2007/07/04に公開)
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* エリアでの注意点・マナー