林京 5.13d (備中・羽山渓)

今さらここで言うまでもなく、羽山は質の高いストレニュアスなルートの宝庫だ。

この岩場を開拓したのは当時の岡山最強メンバーたちで、「男の花道」や「門前払い」、「お百度参り」などは、今でも備中屈指の高難度ルートとして君臨している。
これらのルートが人工壁もなかった時代に初登されたというのは驚きであるが、再登すれば開拓者たちがクライミングにかけた情熱が半端なものではなかったことが容易に理解できる。備中に限らず昔のクライマーはすごかった。

「林京」は、設定者が「男の花道」を完成させた後に設定したルートだが、長い間初登されずに未登のまま非公開プロジェクトとなっていた。
7年ほど前だと記憶しているが、「棲竜門」をR.Pしたあと羽山で出会った設定者から、「プロジェクト登ってもいいぞ」と言われた。その時は林京のスケールと、設定者の「男の花道より2グレードは難しい」の言葉にとてもそそられた。

そのあと、私は足を怪我して羽山には半年くらい行けなかったのだが、そのルートのことはずっと気になっていて、登れないのに松葉杖をついて見に行ったりもした。
それから春になり、トップロープでならなんとか登れるくらいまでに足も回復してきたので、早速羽山に向かった。終了点を7、8メートル上げ、次のシーズンに登るために準備を整えてそのシーズンを終了した。

しかし数ヶ月後、備中を訪れた世界のユージがあっさり初登してしまう(もちろん設定者に許可を得て)。
しかも、5.14は確実にあると思っていたグレードも5.13dで、これには初登をさらわれたのとあわせてかなりガックシきた。
でも、「ユージならしゃーないな」とすぐ前向きにそのことを受け入れ、自分も絶対登ってやる!とトレーニングを続けた。
それから大阪のN貝氏が第2登、私もストレニュアスな内容に苦労したが、なんとか第3登に成功した。

35メートルとスケールのあるこのルートは、レストポイントを挟んでパワーエンデュランスな下部と発達しきっていないコルネ帯の上部とに分かれる。
美しいフェイスの下部はボルダームーブが連続し、上部はロープも重くなりランナウトするので最後の最後まで気が抜けない。

「林京」は、間違いなくクライマーなら誰もがシビレる四つ星ルートである。
このルートが設定されてからユージが初登するまで10年かかったわけだが、つくづくクライミングってすごい遊びやな~と思わずにはいられない。 (ーー;)

(2007/07/04に公開)
——————————————————————————–

* エリアでの注意点・マナー


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です